
【保存版】輸出通関と輸入通関を基礎から徹底解説!制度を正しく理解しよう
貿易実務を行う上で、避けては通れない「通関」に関する業務。なんとなくは理解してい...
【保存版】輸出通関と輸入通関を基礎から徹底解説!制度を正しく理解しよう
貿易実務を行う上で、避けては通れない「通関」に関する業務。なんとなくは理解しているけど説明できるほど理解できていないかも…といった方向けに基本的なポイントを解説するので、ぜひ実務に活かしてくださいね。
通関とは

通関とは、物品を他国と取引する際に「税関」に対して輸出入の申請をして許可を得る手続きのことを言います。行政の許可を得ない場合は密輸扱いとなります。
旅行や出張で自国のものを他国に持ち出す際も、申告が必要です。空港の税関での申告のご経験がある方もいると思います。
貿易における通関は、個人でも申請できますが、煩雑な業務のため、通常は「通関業者(フォワーダー)」に依頼して行います。
日本の通関の概要と制度を理解しよう

申請をしないと密輸扱いとなり罰則が課されるほど重要な「通関」。まずは基本的な概要と、実務の裏にある制度を確認しましょう。
輸出通関のポイント
輸出通関と輸入通関ではポイントが異なりますので、まずは輸出通関からご紹介します。
輸出申告とは
通関を行うために、まず貨物を輸出したい旨を税関に意思表示することを輸出申告といいます。空港で行う税関のように、口頭で申告することもできます。
貿易における通関申告は、各種書類を添付して書類で申請します(NACCSを使用した電子申請が一般的)。具体的な申請の流れは後ほど紹介いたします。
外国為替及び外国貿易法(外為法)の確認は必須
輸出申告を行えばなんでも輸出できるかと言うと、そうではありません。
国際取引された商品によって、各国の安全が脅かされないようにするため、外国為替及び外国貿易法(外為法)という法律があります。物品を輸出する前に政府の許可や承認が必要であることを定めた法令です。
外為法に基づき、通関で申請する前に、輸出しようとする貨物が特定の貨物(リスト規制)に該当するかどうかを判断します。これを「該非判定」と言います。該当する場合は「輸出許可申請」、非該当の場合は「非該当証明書」を添えて輸出申告をします。
さらに、リスト規制にない貨物でも「キャッチオール規制」に基づき輸出先の需要者や用途を確認します。場合によっては通関前に「輸出許可申請」が必要です。「輸出許可申請」は許可までに数週間〜数ヶ月かかりますので、余裕を持って申請しましょう。
輸出してはならない貨物
外為法では貨物の規制を行いますが、そもそも輸出してはいけない貨物もあります。税関が以下の様に定めていますので一読しましょう。
- 麻薬、大麻、あへん、覚醒剤など
- 児童ポルノ
- 特許権、商標権、著作権、などを侵害する物品
これらは一切国外への輸出、持ち出しができません。
輸入通関のポイント
続いて、輸入通関のポイントをご紹介します。輸入では国内の制度を利用して貨物を引き取ることもあります。
輸入申告とは
輸出時と同様に、まず貨物を輸入したい旨を税関に意思表示することを輸入申告といいます。こちらも旅行や出張で空港で行う税関のように、口頭で申告することもできます。
貿易における輸入申告では、インボイスやパッキングリストなどの船積書類に加え、「原産地証明」も必要になることがあります。原産地証明と輸入申請の流れは後述します。
納税を後ろ倒しにできる「特例輸入申告制度」と「特例委託輸入制度」
日本では輸入申告だけでは貨物を引き取れません。輸入許可の後に関税や消費税などの税金を支払ってはじめて貨物は引き渡されます。
しかしながら、実務上タイムリーに税金の納付を行うことは非常に難しいです。そこで税金の納付を後でまとめて行い、先に貨物を引き取れる制度ができました。これを「特例輸入申告制度」と言います。ただし、税関長の承認を受けた輸入者のみとなりますので、事前の申請が必要です。
また、輸入者本人が特例輸入者になることもハードルがありますので、認定された通関業者に依頼して特例輸入申告制度を利用することが一般的と考えられます。この制度を「特例委託輸入制度」と言います。
輸入許可前貨物の取引承認制度(BP(Before Permit)制度)
食品など、荷下ろしされてから輸入通関で許可が出るまで長期間保税地域に保管すると、傷んでしまうような貨物もあると思います。
これらのようなものについては、関税等の税金を先に納付し、それを担保に輸入許可前に貨物を受け取ることができる「輸入許可前貨物の取引承認制度(BP(Before Permit)制度)」もあります。
輸入してはならない貨物
輸出してはいけない貨物と同様に、輸入が禁止されているものもあります。
- 麻薬、大麻、あへん、覚醒剤など
- 児童ポルノ
- 特許権、商標権、著作権、などを侵害する物品
- けん銃や銃砲弾
- 爆発物や火薬類
- 貨幣や紙幣、有価証券
- その他法令で定められた特定の貨物
これらの品目に当てはまる貨物がないか、確認しましょう。
通関士とフォワーダーの役割は?
今までご紹介したような手続きは、実際は業務委託された通関業者(フォワーダー)が行うことが一般的です。通関申告書類の代行や関税計算の審査などはフォワーダーの独占業務だからです。
主にそのフォワーダーに設置が義務付けられているのが、通関士という職業です。通関申告書類の代理作成などはもちろん、それぞれの貨物に関税率を決定するHSコードを割り当てる業務をしています。通関士は国家資格で主にフォワーダーに在籍し税関に申告する職業ですので、税関などに在籍する職員ではありません。
通関の流れを確認しよう

通関の概要を確認できたところで、次は実際の通関の流れを見ていきましょう!輸出・輸入に分けて解説します。
輸出通関の流れ
輸出通関の流れは以下の通りです。
- 必要書類を揃える
- 貨物を保税地域へ搬入する
- 輸出申告をする
- 税関で書類審査が行われる
- 貨物を積み込む
それぞれについて説明します。
必要書類を揃える
まずは、以下の書類を揃えます。
- インボイス
- パッキングリスト
- 他法令に抵触していないことを証明する書類(非該当証明など)
揃い次第、船積みのCUT日(書類締め切り日)までに通関業者へ提出しましょう。
貨物を保税地域へ搬入する
輸出する貨物を保税倉庫へ搬入します。
輸出申告をする
インボイスやパッキングリストをもとに、輸出に問題ない貨物かどうかを確認し、通関士が税関へ輸出申告をします。
税関で書類審査が行われる
申告内容を税関が確認します。時に、貨物の梱包を開梱し申告書類と現物に不一致がないか、検査することがあります。問題がなければ「輸出許可」となります。
貨物を積み込む
許可がおりたら、保税地域から貨物を搬出し、船や飛行機へと積み込みます。
輸入通関の流れ
輸入通関の流れは以下の通りです。
- 貨物が保税地域へ搬入される
- 輸入申告をする
- 税関の書類審査が行われる
- 輸入税の納付をする
- 貨物の国内配送を手配する
それぞれについて説明します。
貨物が保税地域へ搬入される
外国から貨物が到着後、貨物は保税地域へと搬入されます。
輸入申告をする
輸出者から以下の書類を回収し、輸入申告をします。
- インボイス
- パッキングリスト
- B/LやAWB
- (場合によって)原産地証明
税関の書類審査が行われる
申告内容を税関が確認します。輸出同様、現物検査をすることがあります。また、貨物にかかる関税率を確定します。問題がなければ「輸出許可」となります。
輸入税の納付をする
輸入の場合は関税や消費税がかかります。請求内容のとおり、納付します。先述の特例輸入申告制度を利用する場合は納付は後日となります。
貨物の国内配送を手配する
税金の納付が完了後、貨物を保税地域から搬出できるので、国内の配送手配を行います。
以上が通関手続きの流れです。スムーズに行なえるように、書類などの早めの準備を心がけましょう!
通関と深い関わりのある「HSコード」

HSコードは通関業務と切って離せません。「商品の名称及び分類についての統一システム(Harmonized Commodity Description and Coding System)に関する国際条約(HS条約)」の略であり、200以上の国が使用している貨物分類のためのコードです。
輸入申告時に食品、化学製品、木材…など貨物を調査し、コード表に基づき6桁の番号に割り振ります。そのHSコードによって、関税率が変動します。また、日本がどの様な貨物を輸出入しているのか、貿易の統計を取る際にも使用されます。関税の詳細については後述します。
貿易ではいつ、どのような税金がかかる?

何をするにもついてまわる税金。貿易取引でもかかる税金がありますが、免税・減税の制度もあるので、確認しておきましょう!
輸出時に税金はかかる?
通常、国内であれば商品を販売すると消費税がかかります。ですが、消費税は国内消費にかかる税金のため、海外で消費される輸出による販売には、消費税がかかりません。これを「輸出免税」と言います。
輸入時には税金がかかる
輸出では税金がかかりませんが、輸入時には消費税及び関税がかかります。
消費税はCIF価格に関税ほか税金を含めた金額に対して課税されます。飲食料品の軽減税率は通常と同様、適用されます。
さらに酒税やたばこ税など特定の貨物にかかる税金もあります。
輸入時にかかる「関税」
関税は、商品代や海外での税金、輸入に要した送料(運賃や保険料の)の合計額に対してかかります。輸入通関で割り振られたHSコードによって3%〜40%と税額が変わります。無税のものもあります。
関税はむやみに他国のが生産したものを輸入し、自国の産業が衰退しないよう、品目ごとに設定されています。
発展途上国との取引のための「特恵関税制度」
一部の発展途上国や地域から輸入される特定の貨物については通常より低い税率を適用できます。これを「特恵関税制度」と言います。
発展途上国の輸出所得の増大、工業化を促進し経済発展を目指すために制定されています。
原産地証明を利用し関税率を低くしよう
特恵関税制度や、その他貿易協定(EPAやRCEPなど)で関税の減税・免税を適用する場合には原則「原産地証明」という証明書が必要になります。その名の通り、その貨物が輸出国で生産されたものであることを証明するもので、日本では各商工会議所にて発行できます。
輸出者から原産地証明を入手し、通関時に提出することで関税の減税・免税を行い経費削減へ繋げましょう。
≪補足≫その他の附帯税について

上記でご紹介した、関税や消費税などに加えてペナルティとして課税される税金があります。以下で簡単に紹介します。
- 延滞税・・・関税が期限内に支払われなかった場合にかかります。納付されるべき関税額に対して、期日翌日〜2ヶ月までは年利2.6%、2ヶ月を過ぎると年利8.9%として、加算税額が計算されます。
- 無申告加算税・・・通関申告で必要な申告が行われなかった場合にかかります。追って修正して増額した金額の15%が課税されます。
- 過少申告加算税・・・通関申告後に税関の調査により貨物価格が過少であると判断された時に課されます。追って修正して増額した金額の10%が課税されます。
- 重加算税・・・「過少申告加算税」に該当する場合に、輸入者の隠蔽や仮装行為をしていたことが明らかになると課されるものです。本来の税額の35%が課税されます。さらに「無申告加算税」に該当する場合に隠蔽や仮装が確認されると、本来の税額の40%が課税されます。
無申告加算税と過少申告加算税は、税関が指摘する前に輸入者自身で気付き修正することで減税されますので、気づいた時点で修正申告を行いましょう。
まとめ

今回は、通関の概要と流れについてご紹介しました。通関申告の流れはもちろん、フォワーダーや通関士の役割も理解し、スムーズに貿易取引を行えるようにしましょう。
Portrichでは今回ご紹介のフォワーダーという立場から、スムーズな貿易取引のできる仕組みをご提案いたします。通関や貿易実務でお困りごとがございましたらお気軽にお問い合わせください!
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